yo-log

@yo-iidaのlog

退職への向き合い方

本記事はEngineering Manager Advent Calendar 2018の19日目です。

エンジニアリングマネージャーをやっているとメンバーの退職というイベントが発生することがあるかと思います。
この退職というイベントはエンジニアリングマネージャーにとってはとても悩ましくどう対処すべきなのかが難しいイベントでもあるにも関わらずテーマがテーマだけにあまり知見が共有されない話題のように思います。

そこで今回は退職についてどう向き合うべきなのかを私の観点から書きたいと思います。

退職云々の前に普段から考えておくべきこと

メンバーがいなくなるとどうなるかを考えて組織戦略を考える

退職に関わらず、怪我・病気や、ライフイベントなどでチームからしばらく離れることがあると思います。

そういった場合にチームのアウトプットにどのような影響があるか、その影響は事業の持続性、システムの持続性にどのような影響を与えるのか。 影響がある場合取れる選択肢はなんなのかを普段から考えて組織戦略を考えておくべきです。

事業の持続性、システムの持続性に関する影響例

  • システムの運用が止まるもしくは遅くなるか
    • 他のメンバーで回せる業務か
    • 縮退運転が可能か、その許容期間はどれくらいか
  • 収益への影響がどれくらいの期間でどれくらいの金額になるか
  • 監査への影響がどれくらいあるか
  • ...

このような事業の持続性、システムの持続性に関して判断するためには、メンバー、そしてチームのスキルセットを正しく把握しておく必要があります。

チームでスキルマップを作ってみるなどのワークをチームビルディングの過程などで一度はやっておくとよいでしょう。

我々はなぜここにいるのか

これは根源的なテーマです。 多様な働き方を選択できる世の中になった今あえてその組織において働く理由はなんなのでしょうか?
人によってその目的は様々だと思いますが、マネジメントとしては全メンバーのWillを把握しておくべきです。

そこから組織に期待されていること、組織として提供できる価値そしてその優先順位を明らかにすることができます。

またその目的がどれくらいのタイムスパンで達成されるものなのかも考える必要があります。

達成した先に新たな目的を考えるべきなのか、その組織を離れて次のチャレンジに移行するのか、組織の提供価値と期待がずれてきていないかを判断する基準になるからです。

できればこの組織に期待されていること、組織として提供できる価値は経営陣とも認識をすり合わせておけると理想です。退職に関しての捉え方がずれていると経営陣からのマネジメントに関する評価においても不幸な結果につながる可能性があります。

メンバーとの信頼関係

これがもっとも重要です。
上で述べたようにメンバーがその組織にいる目的や将来のビジョン、マイルストーンについて普段から腹を割って話せる関係であることが非常に大事です。

フラットな関係で双方向のフィードバックをできなければ組織の持続性において重要なインサイトを見逃すことになります。

退職したいと言われたら

以上のような前提の上で、退職の相談をされたらまずは理由を聞きましょう。
仕事を変えるというのは人生において大きな決断です。
その決断をしたということはそこに大きな理由があるはずです。

  • やりたいことをやり尽くした
  • 起業する
  • 引っ越す
  • 人と合わない
  • 方針・価値観が合わない
  • 報酬が合わない
  • やりたいことができない
  • ...

それがポジティブ、ネガティブ関わらず、考えていた組織戦略の中で想定できていたものなのかが重要です。

想定できていた理由だった場合

想定できていた理由であれば素直に送り出しましょう。

ただし、上で述べたようにメンバーがその組織にいる目的が達成されたかどうかがポイントになります。
目的が達成されていないようであれば、メンバーが抱えている問題に対して退職という解決策が適切でない可能性もあります。
そのようなケースの場合は引き止めにならないように気をつけながら率直なフィードバックを試してみましょう。

メンバー自身の課題の可能性がある場合、

  • この課題についてはどう思っている?
  • 何が問題だと思う?
  • 誰が解決すべき問題だと思う?
  • 自分の力では解決できないと判断したのはなぜ?
  • それは誰かに相談した?

などです。
場合によってはまだ残ってチャレンジするという決断に変わるかもしれません。

想定できていない理由だった場合

想定できていない理由だった場合、その決断のきっかけとなった課題をなるべく聞き出しましょう。

課題をヒアリングしたらマネジメントメンバーでその課題を分析し組織としてのアクションを考えます。場合によっては経営陣を巻き込んで課題解決に向かう動きをしていきましょう。

課題をそのままにせず、必ず解決に向かっていくことを本人、そしてその他のメンバーにも伝えていきましょう。逆に課題を放置してしまうとさらに人が離れていってしまう原因に繋がってしまいます。

引き止めをすべきか

引き止めによって残る決断をし結果的に組織としてはよかった、というケースもあるかもしれません。

しかし、私は基本的に引き止めには前向きではありません。
なぜなら、引き止めは普段から期待値と提供価値がずれてしまってきていたことを見逃した挙句言われてやるというマネジメントとしてはまったくバリューを出せていない行為だからです。

想定していなかった理由で退職の相談をされた時点で手遅れという見方をしたほうがよいでしょう。

普段から先手を打てるようにインサイトの収集に時間を使いましょう。

メンバーへの伝え方

伝えるべきメンバーの数が少ない場合はメンバーを集めて伝えるのもよいです。
チームメンバーなど関わりが深い人たちへ先に本人から伝える場を設けるのもよいでしょう。

伝えるべきメンバーが多い場合は、事実の周知と今後の方針について先にチャットなどで伝えた上で1on1等の心理的安全な場で感情面も含めたケアをしていくのがよいでしょう。

ここでの重要なことはマネジメントとして退職についてそもそもどういう考えを持っているかを伝えること、課題があればそれに向き合っていくということをきちんと伝えることかと思います。

長く一緒に働いてきたメンバーが離れるのは寂しいですが、感情面だけでなく事業・システム・組織の持続性の観点から論理的に捉えることも重要です。

1点気をつけたいのは伝えるべき人に本当にきちんと伝えられているかということです。個別に伝える方針をとった場合、情報の非対称性が起きるリスクが高くなります。人づてに聞いて「知らなかった・・」となるのは最悪です。

組織の持続性について

チームそして組織はなるべく固定化して長く同じメンバーで試行錯誤し続けることでナレッジが溜まりパフォーマンスの向上につながります。

一方で、同じメンバーで同じ仕事をする期間が長くなりすぎるとダブルループ学習がしづらくなるという問題もあります。

チームは短期的な観点では固定化したほうがよい反面、長期的な観点では小さな流動性を持たせたほうがよいと考えています。

取り組むミッションを変えたり、チームを異動したり、退職したり、こういった変化は短期で大きな変化を起こすことはアンチパターンですが、長期で小さな変化を起こしていくことはむしろ組織の持続性の観点で重要です。

ということで、何を伝えたいかというと退職というとネガティブなイメージを持たれることが多いと思いますが、ちょうどいいタイミングというのも存在すると私は思っていまして、エンジニアリングマネージャーとしては真剣にやるが深刻になりすぎないようにするのが心理的な負担を考えてもよいのではないかなということです。

最後に

エンジニアリングマネージャーをやっていると組織のいろいろな課題に向き合わなければならず、ときに辛いときもあるかもしれませんが、退職のような難しいテーマについても正しく捉えることできっとうまく付き合っていけると思っています。

退職したあとも副業で手伝ってくれたり知見を交換しあったりそんな良い関係を作れたときはうれしいですよね。既存の概念に縛られずどう人とのつながりを作っていくかがエンジニアリングマネージャーの仕事の醍醐味とも言えると思います。